【記事】上海地下鉄で追突事故 271人負傷 中国鉄道不信再び

上海市地下鉄10号線で27日午後2時45分頃(現地時間)、列車同士の追突事故が発生した。現地当局の公表によると、事故の負傷者は邦人2人を含め271人、20人は重傷、そのうちの7人は重体。死者はいないという。

中国国内メディアによると、当日午後2時10分頃から、信号システムの故障により、同路線の一部区間では減速運転を実施し、専用電話による指令伝達と手動運転に切り替えていた。衝突された前方の列車の乗客は「約30分間停車した後に突然、衝撃を受けた」と語った。事故は「豫園駅」と「老西門駅」の間のトンネルで起きた。

 衝撃の後、追突した後方の列車の前面は激しくひしゃげており、追突された前方の列車も後ろガラスが割れ、車両連結部が変形した。上海東方ネットは、追突が起きたトンネル内では血痕があちこちに見られ、血の付いたティッシュなどが捨てられていると報じた。中国版ツイッター「微博」には、額から血を流し横たわっている乗客の写真や、血のりが残る


また、乗客からの情報では、事故が発生した直後、緊急時に開くはずの扉が開かなかったため、室内の乗客たちは先頭車両まで歩いて、運転手室から脱出したという。

 事故発生してから約4時間後の午後7時過ぎ、同路線は減速して運転を再開したが、事故調査チームの指令により、28日からは、事故現場を含む同路線の一部区間の運行中止が決まっている。

事故が発生した10号線は上海市内の中心部地域を結んでおり、同市の最も重要な路線と言われる。今回故障した信号システムの製造元はカスコ(卡斯柯)信号有限公司。同社は1980年代に設立され、国営大手の中国鉄路通信信号とフランスのアルストム社の合弁会社である。同社の公式サイトによると、その信号システムは上海地下鉄のほか、天津市や大連市、長春市、広州市深セン市の地下鉄にも導入されている。

 7月23日に発生した、40人以上の死者を出したという中国高速鉄道の衝突事故、中国政府は事故原因について信号システムの故障と公表した。その信号システムを供給したのは同じくカスコ社だった。

 2年前の2009年12月22日、上海地下鉄1号線も信号の誤誘導により、両車両が側面衝突し、そのうちの一両が脱線する事故が発生した。幸い死傷者はいなった。その信号システムの構築も、カスコ社が担っていたという。

 今回事故が起きた10号線では、これまでにも信号システムがたびたび故障を起こしていた。

 温州高速鉄道事故直後の7月28日には、10号線で車両の進行方向を間違えたというトラブルが発生した。同地下鉄を運営する申通地鉄の公表では、信号機の故障が原因だったという。

 8月2日の午前中では、またも信号機の故障が原因で、10号線にある列車が突然動かなくなる事故が発生した。結局、後続の列車に押されて最寄の虹橋路駅までに到着して乗客を下したという。

 この直近の二件の事故が発生してから、申通地鉄は微博で陳謝した。また、メディア向けの声明文では、事故原因の究明を誓い、対応策を講じて事故の再発防止を約束していた。それに続き、今回の事故後も、「今日は上海の地下鉄運行史上、最も暗い日」と述べ、乗客や上海市民に謝罪した。

 事故発生後、ネットユーザーは微博や報道のコメント欄を利用して憤慨を表している。ポータルサイト網易の関連報道に、「故障ばかり起きる信号システムをどうして安全対策も講じずに使い続けたのか。責任は誰が負うのか」「日本では事故が起きたら社長は自殺で謝罪する。こっちでは口での謝罪ばかりで何も行動を起こさない。この態度の差がすべてを説明できる」と運営会社を責めるコメントが多く寄せられている。

 また、「今回は地下だから直接埋めればいい」などといった揶揄するコメントや、「『今日は上海の地下鉄運行史上で最も暗い日』ではなく、『この62年間(共産党政権)は歴史上最も暗い年月』だろう」「政府が語るすべてのことは人々が疑う。人々が疑うすべてのことは政府が否定する。政府が否定するすべてのことは事実だと証明される。事実だと証明されるすべてのことは、うやむやのうちに終わってしまう」と政府を批判するコメントも多数見られる。なお現在、多くの関連記事のコメント欄は閉鎖されている。 

【記事】大紀元日本