【記事】中国の預金残高急減 10月に2010億元が市場に流れる

継続的なインフレと実質マイナスの預金金利が続いている中、中国民衆の預金意欲が氷点に下がり、莫大な資金が銀行から市場へ流れ込んでいる。中国人民銀行中央銀行)が11日に公布した最新のデータによると、10月の人民元預金残高の純減少額は2010億元(1元は約12円、約2兆5千億円)に上り、前年同期に比べ、3618億元減少した。減少が特に目立ったのは家計部門による預金残高で、その減少幅は7272億元に達する。財政収入による預金額の増加により、総預金残高の純減少額は2千億元台に止まった。

 4月と7月に続き、今回の預金残高の急減は今年に入ってから3回目となる。4月は家計部門による預金残高は減少したものの、全体の残高はプラスを維持していた。だが、2回目の7月は今回と同様に総残高、家計部門による預金残高ともに大幅な減少が発生した。預金残高の減少幅は6687億元、前年同期に比べ、8166億元減少した。

 銀行界では、今回の預金残高の減少額は7月に比べ、総額の減少は緩和したものの、家計部門による預金残高の減少は7月よりも616億元上昇したことから、民衆の預金意欲は依然低い水準にあると見ている。

 頻繁な預金残高の減少要因について、業界内は、インフレとそれにもたらされた実質マイナス預金金利が続く状況にあるとの認識を示している。7月のCPIは前年同期比6.5%上昇。ここ3年間の最高水準に達した。10月のCPI上昇率は5.5%までに下降したものの、依然として高い水準。目下の預金金利水準(1年物)が3.5%ということから、実質金利はマイナス2%との計算になる。このような状況下で、銀行預金よりも物的資産への投資や「影の銀行(銀行のように融資を行う企業や個人)」への投資に資産が流れる。

 中国は「貯蓄王国」とも言われ、国民の貯金志向が高い。これまで家計部門を中心とする貯蓄残高は順調に増加してきた。1999〜2010年の11年間、残高が減少したのがわずか4回。これらの減少はまた、当時の株式市場と連動していた。

 それに対して、今年は銀行から預金が大量に流出しているにもかかわらず、株式市場や不動産市場は低迷したままだ。経済学者は、銀行からの資金流出は貨幣市場の貸借環境をさらに悪化させ、実体経済に悪影響を与えかねないと危惧している。

 預金残高が減少し続ける中、人民元建て融資が持続的な増加を見せている。中国人民銀行が発表した最新データによると、10月までの人民元建て融資残高は53兆5000億元で、前年同期比15.8%増加。10月一ヵ月の新規融資総額は5868億元で、9月の4700億元から増加し、市場予想の5000億元を大きく上回った。

【記事】だいきげん