【2011年華南日系企業求人動向予測】

2009年以降、華南地域では労働力不足が深刻化しており、多くの企業が人員募集に苦労していることであろう。また2010年に華南地域の日系企業をはじめとする中国全土の企業でストライキが多発したことは、メディアにもしばしば取り上げられており記憶に新しい。このような状況の中、すでにスタートした2011年の華南地域の日系企業の求人動向は如何なるものになるのであろうか。人材会社である当社の視点から予測してみたいと思う。

周知のごとく、これまで華南地域では来料加工の優遇政策が実施されてきた。来料加工は、中国においては関税や増値税などが免除され、香港においても課税所得の50%が免除されるというメリットがあり、もともと生産の実体がなかった中国に工場を作っただけであることから、工場建物と労働者を中国側が提供し、それ以外の機械装置、原材料、工場管理者等一切の生産要素を香港法人が負担するという広東省独自の加工形態である。

しかし、ここ数年中国政府は来料加工工場を外商投資企業(中外合弁、中外合作、外資独資)に転換することを推進しており、実際に多くの来料加工工場が転換に向けて動き始めている。

これにより多くの工場で、今までは必要とされなかった営業、購買、財務部門などの間接人員を新たに採用することが予想される。

また、これまで多くみられた外国企業代表処は多くの法律上の制限があるため、更なる発展のために、多くの既存の代表処が法人化へと動き始めている。そのためここでも間接人員の需要が見込まれる。

当社の求人データでも、2010年の後半からすでに財務、営業に関する求人が増加傾向にある。

農民工の状況をみてみると、重慶西安など西部地域諸都市の急速な経済発展により、農民工の地元での就職機会が大幅に増加している。こういった地域では近年募集給与水準も高くなっているが、生活費は沿岸地域に比べればいまだに安いこともあり、出稼ぎに出て来ていた人々の、いわゆるUターン就職が、昨年に引き続き今年も見られることが予想される。

従い、深圳をはじめとする沿岸地域では、昨年同様ワーカー募集の困難な状況が続くことになるかと思われる。広東省人的資源社会保障庁の情報では、春節連休明けの広東省のワーカー不足は100万人前後に上ることが予測されている。


世界的な経済危機を経て、華南地区でもハイテク産業やサービス産業などを新たな成長エンジンとした産業構造転換の重要性が再認識されている。これまでの改革開放後の30年間は、工場で単純作業をする出稼ぎ農民工を中心とするワーカーを大量に採用していれば事足りた。 たが今後中国ではモノをつくるだけでなく、製品を売っていかなければならない。

そうなれば、単に工場の中国人ワーカーと日本人幹部との間に立ってコミュニケーションできる日本語人材だけでは不十分であり、今後は現地の市場や現地特有のビジネスルールを理解し、現地企業を相手に堂々と渡り合えるような優秀な中国人による現地化が求められることになるだろう。華南地区の日系企業も採用をいままで以上に高度化していく必要に迫られると考えられる。


最低賃金については、1月1日より北京が21%アップの1160元に、2月1日より江蘇省が19%アップの1140元、広東省では15%アップの1300元にまで引き上げられた。深圳市でも18.6%アップの1320元に引き上げられることが予想される。深圳市人的資源社会保険局の王敏局長は地元紙のインタビューで第12次5ヵ年計画(2011〜15年)の期間中に月1100元の最低賃金を毎年約15%引き上げ、約2200元にまで増やす計画を明らかにしており、メーカーをはじめとする多くの企業に影響が及ぶことが予想される。企業にとっては今後の人員採用の際に十二分に考慮すべき要素であろう。


昨年12月より深セン市も住宅積立金制度が義務化され、更に2011年7月1日より「中華人民共和国社会保険法」が実施され、従業員に対する政策の充実傾向が進んでいることから、企業には経費削減、生産性改善が求められている。従って人材の現地化(中国人化)と生産技術IEの人材の需要が増えることを予測する。

現地日本人求人と中国人求人との関係について、ここ数年日本人と中国人の給与差は一貫して縮まる方向にある。当社の統計によれば、現地採用日本人と中国人との間の給与格差は、2004年の4.71倍から2010年には3.45倍にまで縮小している。

経験や能力はさておき、どうしても日本人を採用したい、という企業が減ってきており、逆に中国人管理職の募集が著しく増加傾向にある。


寄稿:BlueNet人材総経理 松宮浩行

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