【記事】胡錦涛主席のAPEC・CEOサミットでの講演全文

新華社ホノルル11月14日】中国の胡錦涛国家主席は現地時間12日午前、米ハワイ州の州都ホノルルで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)CEOサミットで「手を携えて前進し、共に未来を築こう」と題して基調講演を行った。講演内容全文次の通り。

アジア太平洋のビジネス界の友人と美しいハワイに集まり、「未来の再定義」というテーマをめぐって意見を交換することを喜んでいる。

現在、世界の経済情勢に高い関心を払う必要がある。一部主要経済体の成長が減速し、一部の国の公的債務問題が際立ち、国際金融市場の動揺がやまず、新興市場国のインフレ圧力が増大し、さまざまな形の保護主義が著しく増え、世界経済回復の不安定性、不確実性が増している。グローバル経済ガバナンスに新たな変革が見られるが、世界経済の枠組み変化への対応は依然難しい。世界経済の構造調整は新たな進展を収めているが、経済発展パターン転換の差し迫った要求をまだ満たしていない。技術革新は新たな飛躍を育んでいるが、強力な新しい経済成長点はまだ出来ていない。

今サミットが「未来の再定義」をテーマとしていることは、世界と地域の情勢の新たな変化、特徴を深く認識し、今後一定期間の世界経済と地域協力の方向を正しくとらえ、ビジネス界が関心を寄せる問題の解決を探るうえで有益だ。

現在の情勢の下、揺るぎなく成長を維持し、安定をはかり、特に力強い成長を実現し、アジア太平洋地域と世界の経済発展に原動力をもたらさなければならない。それについていくつかの見解を述べたい。

第一、グローバル経済ガバナンスの仕組みを整え、より平等で、より均衡のとれた新しいグローバル発展パートナーシップを築く。新興市場国と発展途上国は世界経済における重みが増し、グローバル経済ガバナンスにおける役割がますます顕著になっている。新しいグローバル経済ガバナンスの仕組みは世界経済の枠組みの変化を反映し、相互尊重と集団による政策決定の原則を順守し、新興市場国と途上国の代表性と発言権を増やものであるべきだ。先進国と途上国の相互理解、相互協調をはかり、先進国は国際経済ガバナンスにおける責任と義務を担い、発展の問題でより多くの実際行動をとり、新興市場国と途上国は自らの国情、発展段階・水準に立脚し、可能な範囲で国際的責任を担い、世界経済の均衡、包容、持続可能、革新、安全成長を共に推進しなければならない。

第二、「APEC首脳成長戦略」を実行に移し、グリーン成長と革新的成長を実現する。昨年の横浜会議で採択された成長戦略は今後一定期間のアジア太平洋地域の経済発展方向を指し示し、その中のグリーン成長と革新成長が核心の内容である。グリーン発展の理念を大いに提唱し、加盟各メンバーがその資源や発展段階、能力水準など具体的状況に基づいてグリーン成長の道を自主的に選択することを尊重すべきだ。環境技術の普及・協力に力を入れ、発展途上メンバーの環境産業発展を支援し、新たなグリーン貿易障壁が生まれるのを避け、環境、貿易、発展のウィンウィン実現に努力する。技術革新の分野で国際協力を強化し、各メンバーの技術革新能力向上、技術革新・産業改造、科学技術研究成果の産業化を支援し、世界経済の発展を技術革新の原動力により一層依拠したものにし、技術革新の新たな成果が各国人民に一層多くの恩恵をもたらすよう努力する。

第三、多国間貿易体制を守り、地域経済統合を深める。多国間貿易体制は各国の貿易政策協調、国際貿易関係の均衡、貿易摩擦の削減、世界経済の発展促進という重責を担い、国際金融危機対応や保護主義反対などの面で重要な役割を果たしている。これまでの約束を確実に実行し、さまざまな形の保護主義に断固反対し、共同で阻止し、均衡がとれ、広く恩恵が及ぶ、ウィンウィンの多国間貿易体制の確立をはかり、ドーハラウンド交渉を引き続き積極的に推進し、今年は後発途上国の製品に対する「関税免除、割り当て免除」適用でまずアーリーハーベスト(関税早期引き下げ)の合意を目指すべきだ。中国はすでに国交のある後発途上国の97%の課税商品に対してゼロ関税の適用を宣言している。同時に地域、亜地域経済協力と自由貿易圏設置を積極的に推進し、さまざまなレベルと範囲、各種の方途、方法で地域経済統合のより良い、より速い発展をはかる。中国は東アジア自由貿易圏、東アジア全面経済パートナーシップ、環太平洋経済連携協定(TPP)などを土台としてアジア太平洋自由貿易圏設置を着実に推進し、アジア太平洋地域経済統合の目標を実現することを支持する。

第四、政府と民間部門の協力を強化し、世界の経済発展と経済・貿易協力を共に推進する。ビジネス界はアジア太平洋経済発展の主力軍、国際経済・貿易発展の重要な推進力で、アジア太平洋地域の経済回復のけん引、世界経済の成長促進の面で重要な役割を果たしている。政府部門はビジネス界の経済発展における役割を一層重視し、その意見や提案に耳を傾け、ビジネス界の経済発展や地域協力に参加する意欲や主体性を生かさなければならない。ビジネス界が引き続き戦略的、展望的提案を行い、貿易と投資の自由化・円滑化の一層の推進、地域経済統合の深化、APECの長期的発展などの重大な問題について提言、献策することを希望する。同時にAPECの各レベル、各分野の仕組み、土台を十分生かし、情報を交換し、ビジネスチャンスを広げ、協力を深め、ウィンウィンを実現する。

改革・開放の30年余りの努力で中国経済の実力は強まり、国内総生産(GDP)が大幅に伸び、対外開放レベルが新たな段階に進んだ。同時に中国の発展における不均衡、不調和、持続不可能の問題が依然目立ち、経済成長の資源・環境面の制約が強まり、技術革新能力が高くなく、産業構造が不合理で、都市と農村、地域の発展が調和しておらず、経済・社会の発展を制約する体制・仕組み面の障害が依然比較的多い。

今年初め、中国は第12次国民経済・社会発展5カ年計画(2011―15年)要綱を定め、中国の将来の発展の青写真を描いた。科学的発展をテーマとし、経済発展パターンの転換加速を主軸とし、改革・開放を深め、民生の保障・改善に力を入れ、経済の安定した比較的速い発展と社会の調和・安定をはかる。そのため重点的に次のいくつかの面で努力している。

1、経済体制改革を深め、ビジネス投資環境を改善する。機能転換、関係整理、構造最適化、効率向上の要請に沿って法治政府、サービス型政府づくりを急ぎ、行政審査認可制度改革を深め、ミクロ経済活動に対する政府の関与を減らし、制約・監督の仕組みを整え、政府のサービスをより規範化され、秩序があり、人民の便宜を高効率ではかる公開・透明の方向に発展させる。自らの投資環境づくりに力を入れ、公共サービス・管理を引き続き最適化し、市場システムを整え、国内外の投資家に公平、安定、透明の投資環境を提供する。

2、グリーン経済を大いに発展させ、エコ文明のレベルを高める。グリーン・低炭素発展の理念を堅持し、省エネ・排出削減を重点として、持続可能な発展と気候変動対応の能力を高め、エコ文明の水準を高める。「12・5」計画期に中国の環境保護産業は引き続き急速に成長すると予想される。2015年の環境保護産業の生産総額は2兆元(1元=約12円)を超えると見込まれる。今年から2015年までの中国の環境保護投資は3・1兆元に達し、過去5年間の2倍になる。グリーン産業と省エネ・環境保護産業は外資導入・利用の重点分野とし、旺盛なグリーン需要と良好な投資環境が各国、特に地域企業に広い市場と非常に大きな投資チャンスをもたらす。

3、知的財産権保護を強化し、革新型国家の建設を推進する。知的財産権保護を非常に重視し、国の知的財産権戦略を策定、実施し、知的財産権の法体系を確立し、整え、知的財産権の法執行、司法保護を強化する。知的財産権保護を基礎とし、自主革新、重点飛躍を核心とし、技術革新能力を高め、企業を主体とする技術革新システムの確立を加速する。革新型国家づくりを積極的に推進し、海外のハイレベル革新人材を誘致し、中国製造から中国創造への転換の実現に務める。

4、対外開放レベルを高め、グローバル経済ガバナンスと地域協力に積極的に参加する。より大きな範囲、より広い分野、より高いレベルで対外開放を推進し、より積極的、主体的な開放戦略を実行し、開放によって発展、改革、革新をはかり、引き続き約束としかるべき義務を果たす。輸入と輸出の両方を重視し、輸出の安定をはかると同時に輸入拡大を一層重視し、外資導入と対外投資の両方を重視し、外資導入規模の安定と拡大と同時に中国企業の海外投資を一層重視する。国際経済システムの改革を推進し、国際経済秩序をより公正で、合理的な方向に発展させる。主要経済体のマクロ経済政策との協調を強め、国際経済金融機関の中でより大きな役割を果たす。自由貿易圏戦略の実施を急ぎ、主要貿易パートナーとの経済連携を強め、他の新興市場国、途上国との実務協力を深める。

中国の発展はアジア太平洋地域と世界の経済成長を促す重要な力である。工業化、情報化、都市化(町を含む)、市場化、国際化の深化に伴い、中国経済の構造転換加速、巨大な市場の需要潜在力、豊富な資金供給、科学技術と教育の全体的レベル向上、インフラの整備、社会保障システムの段階的整備はアジア太平洋のビジネス界に中国での投資・起業の得難いチャンスをもたらしている。アジア太平洋地域のビジネス界の関係者が中国の改革・開放と近代化プロセスに積極的に参加し、中国の経済発展によってもたらされるビジネスチャンスと成果を共有することを歓迎する。中国は各国と手を携えて前進し、誠実に協力し、アジア太平洋地域のより素晴らしい未来を共に築くだろう。

(新華網日本語)